2020年5月20日水曜日

iZotope Neutron 3のちょっと捻った使い方:「FocusしないMix Assistant」の検証からの発見と憶測


はい、ヒの字です。

さてと。前回は、iZotope Neutron 3 における2種類の「FocusしないMix Assistant」を紹介しましたが、今回はその中でお話しした「空トラックを使用する」Mix Assistantから「全トラックFocus」のMix Assistantに辿り着くまでの経緯と実験やら検証やらの裏話と憶測などになります。

そもそも「FocusしないMix Assitant:その1」にあたる「空トラックを使用する」Mix Assistantは自分的には大発見で、その時か(2019年12月)からずっと使っていた「裏技(?)」だったのですが、今年2020年5月のある日、「空トラックを使用する」Mix Assistantがなかなか面白い提案をしてきたんですね。

これがきっかけで検証からの諸々を経て、「FocusしないMix Assitant:その2」にあたる「全トラックFocus」のMix Assistantの発見(というか気付きというか)に至ったワケです。あまりにも普通すぎる結果に、「あ~ぁ!使えるんだ」ひっくり返ったりもしたんですけど...ね 笑。

とまぁ、ここからもう少しダラダラとお話をしますが、ご興味のある方のみお読みいただければと思います。

また、毎度のことながら正しいかどうか分からず興味本位と憶測だけでワチャワチャやっている部分もありますので、間違っている箇所がありましたらいろいろとお教えいただけると幸いです。実験大好き!


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いつもの「FocusしないMix Assistant」が面白い提案を!


そんなことである日、いつも通り「空トラックを使用する」Mix Assistantで作業を進めていたのですが、ミックスバランスの提案がいつもと違うぞ?...ってことで、こちらをお聴きください。



ん?ドラムの音が大き過ぎじゃないか?ここから各トラックの飛び出た音とか抑えたり削ったりすればだいじょぶなのか?いやぁ、どう聴いてもステージの中央、ドフロントにドラムがいるようにしか聴こえない。

そこで、それぞれのRelayを開いてレベル・スライダーをチェックみると...

ドラムス: -3.9dB
ベース : -7.5dB
アコギ : -11.1dB
エレギ : -10.5dB
(*空トラックのRelayは0dB)

どんなレベル調節がなされたのかはさておき、各トラックのラウドネスも知りたい。ってことでMMultiAnalyzerをインサートしてラウドネスと波形をチェック。


聴こえてたようになっていますねぇ。ドラムが大きい。ドラムが大きいというより、コードを弾いているアコギと、アルペジオのエレギが引っ込んでいる...。やや、ちょっと待てよ?これってもしかして、何かしらのメロディ楽器を想定したミックスバランスなのかな?と思ったわけですね。


そしたら簡単にメロディを足して再度Mix Assistantしてみようか


先ほどの曲で「空トラック」だったところにオルガン(Kontakt Factory Libraryから)を立ち上げメロディを追加した上で、オルガンをFocusした普通のMix Assistantをしてみた結果がこちらです。オルガンは途中から入ります。



ふむふむ。確かにオルガンを中心としたバランスになっているのかなと。ここを出発点とするのもOKだけど、やっぱりアコギとエレギは持ち上げたいし、Focusしといて申し訳ないけどオルガンは少し引っ込めて全体に馴染むようにしたい。

ここでも各トラックのRelayを開いてチェック。

すみません。オルガンのRelayを開き忘れてます。

ドラムス: -3.8dB    (-3.9dB)
ベース : -7.5dB    (-7.5dB)
アコギ : -11.1dB  (-11.1dB)
エレギ : -10.5dB  (-10.5dB)
オルガン: +1.8dB   (0dB - 空トラックだった時)

なんと!というかやはり!他のパートのレベル調節がオルガンがなかった時とほぼ一緒だったという結果。カッコ内は最初の時のレベル。ちなみに再度Mix Assistantをかける時には、全部のRelayのレベル・スライダーを0dBに戻しています。

それから各トラックのMMultiAnalyzerでラウドネスと波形をチェック。


こちらも聴こえた通りの感じかな...。そうなるとオルガンがなかった時のやつは、やはりメロディ楽器を想定したバランスでMix Assistantが行われていたのか...?転じて、iZotopeのAIくんはどのように分析したのか?俄然この辺が気になってきちゃうのですが、そこまでは分からないので話を先に進めます。

そりゃ勿論、Mix Assistantくんの提案にたいしてAcceptボタンを押す前に、グループ・スライダーでMusicalの部分(ギター)のレベル調節ができるわけですよね。でも、折角なので「どれも目立たせないミックス」を目指して、そこすらも時短にしたい 笑。

そこで思い出したのがNeutron 3のマニュアルに書いてあったコレ。
「リードボーカルが2トラックある場合などは、複数のトラックをFocusすることも可能です。しかしながら、全てのトラックをFocusしても良い結果が得られるわけではありません。

これが本当かどうか試してみたくなった衝動に気づいた時には、全トラックのFocusにチェックマークが入っていました 笑。

これはもう期待しかないっ!!

その一方で、これまで見てきたケースだとFocusした空トラックは殆どの場合、レベル調節されてないことが多い印象もあったので、Mix Assistantが終わってRelayを開いてみたら全トラックのスライダーが0dBのままとかだったりして、あははは~なんて思ったりもしてたのですが...。


全トラックFocusの結果発表~!!


まずは聴いてみましょう。



聴きながら全トラックのRelayから見てみましょうか。


ドラムス: -7.5dB   (-3.8dB)
ベース : -9.5dB   (-7.5dB)
アコギ : -11.5dB (-11.1dB)
エレギ : -10.8dB (-10.5dB)
オルガン: -4.7dB   (+1.8dB)

カッコ内はオルガン追加した時のレベル調整(今回の「Focusしない」時とほぼ一緒)なのですが、ドラム、ベース、オルガンをかなり引っ込めてきましたね!聴いた感じもイメージしていた「どれも目立たせないミックス」

Mix AssistantでAcceptをクリックする前、Bypass Assistantボタンで違いをチェックするのはとってもオススメです。ビフォーアフターのゲインマッチもしてくれているので、ちゃんとした違いが分かりやすいですよ~。

MMultiAnalyzerのラウドネス&波形チェックはこちら。


ラウドネス・メータがほぼほぼ揃ってしまってるんですけど...。いや、そうなんだろうけど。合ってますよ...ね?

なんにしても、最初に目指していた「どれも目立たせないミックス」の出発点にしては、素晴らしすぎるバランスかと。思ってもみなかった発見というか、トラック数が少なければ(今回のケースは5トラック)、全トラックをFocusしてもOKなのか...?


憶測でまとめます (苦笑)


ここでもう一度、Neutron 3マニュアルに書いてあったコレを振り返りましょう。
「リードボーカルが2トラックある場合などは、複数のトラックをFocusすることも可能です。しかしながら、全てのトラックをFocusしても良い結果が得られるわけではありません。」

今までは「全てのトラックをFocusしても良い結果が得られるわけではありません。」の部分で、「全トラックFocusしてもダメよ」とやんわり言われていた印象があったのですが、今回の結果を受けて、少ないトラック数の場合は「複数のトラックをFocusすることも可能」なんじゃないか?と勝手に思い始めてきています。

だとしたら、すごいぜ!Mix Assistant!!と叫びたいです。

もちろん、これからも「全トラックFocus」のMix Assistantも「空トラックを使用する」Mix Assistantを様々なケースで使っていこうと思っております。

それでiZotopeの開発チームの皆さんにまたお会いする機会があったら、「FocusしないMix Assistant」についてお話や質問などできたらいいなぁと思っております。

はいっ。今回は長すぎたのでここまでとします。
お付き合いいただきありがとうございました~。



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