私は以前から、カセットMTRをプリアンプとして使うのが好きでした。特にギターやベースを直挿しして、Trimのツマミを上げていくと音が割れてくる。あのサウンドは、私にとってはとても刺激的なのです。
ギターならバリバリ、ベースならブリブリとした音に変わっていく。その変化がたまらなく好きで、数年前にもSNSでその音を紹介したことがありました。(*この一連のポストでは機種による音の違いにも触れていますので、興味ある方は覗いてみてください。)
カセットMTRだけでギターとベースを歪ませてPCで録音した音がコチラです。
— ヒの字 (Hideki Inoue) (@hidekinoway) March 10, 2023
ギターはバリバリ
ベースはブリブリ
プレイはユルユル
すごく良い音で最高👍🏼 https://t.co/iu92pXEYhR pic.twitter.com/Rbc4EyqOPb
1990年代、私や音楽仲間たちはカセットMTRを使って音楽制作をしていました。当時は(今もだけど)自分の部屋でギターアンプを大音量で鳴らして録音なんてできなかったので、ギターをカセットMTRに直挿しして、ヘッドフォンをつけて夜な夜な宅録していたのです。カセットMTRのプリアンプによる音割れに出会ったのも、まさにその時でした。
そんな経験が過去にあるため、今でもコンピュータを使った音楽制作の中で、あの音を追い求めてしまっています。カセットMTRをエミュレートしたプラグインもいろいろとありますが、特にあの独特な音割れや歪みを再現するものには、ずっとアンテナを張り続けています。
そして、ここ数年では、プラグインだけでなく、カセットMTRプリアンプを再現するギターペダルも見かけるようになりました。こちらの動画は、Tascam Portastudio 424のローファイ・トーンを再現したギターペダル、424Gain Stage by JHS Pedalsの紹介動画です。
そしたら先日(2025年8月8日)、PastToFutreReverbsさんからメールが届きまして、Neural Amp Modeler (NAM)用に、TASCAM 424PORTASTUDIOのプリアンプ・モデルをリリースしたとのことでした。
「ついにこの時が来たか!」私は手を叩いて喜びました。早速ゲットして試してみたのですが、クリーンのチープな感じも、ズバババと「音割れ」する感じもなかなか良いです。EQでHIGHを上げてやると、実際の音に更に近付くんじゃないかなという印象。
それはそうと、このモデルの正式タイトルを見て、驚きました。
「TASCAM 424 PORTASTUDIO MkGee PREAMP DISTORTION PLUGIN EXTENSION FOR NAM GENOME NAM UNIVERSAL」
TASCAM 424 PORTASTUDIOというキーワードに加えて、MK.Geeの名前が入っていたのです。
Mk.Geeは、アメリカはニュージャージー州出身で、現在はLAを拠点に活動しているシンガーソングライター/プロデューサー。DijonやJustin Bieverなどとのコラボ歴もあり、これからのインディーシーンを牽引する存在のひとりとして注目を浴びています。
私は昨年、Spotifyで彼のAre You Looking Upを聴いて以来、すっかり気に入ってしまっています。耳に心地よく、どこか懐かしいサウンド...というよりも、初めて聴いたのに「何か知っているような音」だなと勝手に共感しちゃったりしていました。
そんなワケで 「TASCAM 424 PORTASTUDIO MkGee」で検索してみたところ、Mk.Geeギターサウンドの秘密について説明している海外の記事や、YouTubeではHowTo動画なども多数見つかりました。
実際に彼がギターをTASCAM 424 PORTASTUDIOに繋いでいることが分かり、それを証明する動画も見つかりました。こちらの動画によると「ミキサー」という位置づけで使用しているようですね。しかし、とても興味深い!
自分が90年代から愛してきた「あの音」が、今こうして注目されているワケです。しかも、今もなおカセットMTRをアンプシミュレーター代わりに使っている私にとって、Mk.Geeのサウンドが評価されることで、カセットMTRプリアンプの音が再評価されているのは本当に素晴らしい流れだと思います。
カセットMTR プリアンプの「音割れサウンド」が好きな人は私だけじゃないはずです。あのプラスティックでバリバリズバズバっとした音に魅了された人も少なくないと思っています。当時の宅録キッズも今の世代の人たちもみんなで楽しめたらいいなと思います。ローファイ万歳。
あまりにも流行ってしまうのは困っちゃうんですけどね...笑