はい、ヒの字です。
ほい。アムステルダム旅行記2の2日目になります。
この日は、コブラ近代美術館(Cobra Museum of Modern Art)に行きましたよ。
コブラ近代美術館は、2度目のアムステルダム旅行が決まり、I amsterdam city cardが使える美術館・博物館のリストに入っていたことで新たに見つけた美術館でした。私はコブラ・ミュージアムに行くぞ~!と興奮していたのですが、奥さんやベルギーにいるお義姉ちゃんは、どうやらヘビのコブラだと思っていたようですw
コブラは、第二次世界大戦後に欧州で始った前衛芸術運動で、鮮やかな色使い、激しいブラシ・ストローク、そして子供のような自由な作風が特徴になります。そうしたアートが集まったコブラ近代美術館で何を観て、何を感じたのかを書いていこうと思います。
それでは、いってみよー!
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まずは、コブラの詳細説明をカンタンに
時は1948年。シュルレアリスムの国際コンファレンスのためにパリに集まったデンマーク、オランダ、ベルギーの詩人やアーティストたちが、「今のシュルレアリスムって理論的すぎじゃね?社会変革を引き起こすような、もっと自由で実験的な新しいアート・グループを始めようぜ」とスタートさせたのがコブラ。
グループ名は、主要メンバーそれぞれの出身都市である、コペンハーゲン(Copenhagen)、ブリュッセル(Brussels)、アムステルダム(Amsterdam)の頭文字をとって、コブラ(CoBrA)となっているワケです。
直感的且つ自発的な表現をゴールとしたコブラのメンバーは、子供や知的障害者たちの創造表現、ナイーヴ・アート、フォーク・アート、そしてトライバル・アートから大きなインスピレーションを受けています。
コブラの活動期間はたったの3年間(1948年から1951年まで)。その中で、国際的なコラボレーションを行なったり、定期的に出版物を出したり、2度の大きな展覧会(1つはアムステルダム市立近代美術館)を開催しており、グループ解散後もコブラのスピリットは、メンバーそれぞれの作風の礎となっているようです。
アムステルフェーンにあるコブラ近代美術館
この美術館は、私が宿泊していたホテルからトラムの5番に乗って行くのですが、ミュージアム広場(Museumplein)とは逆方向のアムステルフェーン(Amstelveen)という町にあります。
5番トラムの終点、Amstelveen, Binnenhof で降りて、大きなモールを抜けると目の前に見えるのがコブラ・ミュージアム。
ホントは左手に大きな彫刻があります それも含めて写せなくて残念 |
入り口で早速 I amsterdam city card を出すも、特にピ!とかすることなく、「OK」と言われただけで、チケットとか何か残るものを渡されることもなく中に入りましたよw ちなみに、今回のブログを書くにあたり、館内で撮影した写真を本ブログに載せることは事前に許可を頂いております(基本的にフラッシュなしなら撮影OK)。
私が行った時は、美術館のコレクションで構成された「New Acquisitions / Collaborations」、デンマークのアート・デュオ Bank&Rauとのコラボレーション作品「Brutal Vitality」、そしてコブラ創始メンバーのひとりConstantの企画展「Space + Colour」の3セクションに分けた展示をしていました。
コブラ・コレクション
「New Acquisitions / Collaborations」では、コブラの主要メンバーの作品や詩人たちとのコラボレーション作品から、その他世界各国の関連アーティストの作品と新たに寄贈された作品までがズラズラ~っと展示されていました。
オランダのアーティスト、カレル・アペルの油絵作品 |
このセクションに入るとすぐに、オランダのアーティスト、カレル・アペル(Karel Appel)の色鮮やかな油絵作品が迎えてくれます。デビュッフェとかミロとかクレーみたいな、デフォルメされた「生き物たち」はとにかく見入ってしまいます。
少し進むと、詩人とのコラボレーションについてのビデオや作品そのもの、またコブラ関連の出版物やセラミックを含む立体作品も展示されていましたよ。
カール・ヘニング・ペダーセンのコーナー |
新たに寄贈された作品の中には、カール・ヘニング・ペダーセン(Carl-Henning Pedersen)のペインティングなどがありました(あとリトグラフだったかな?)。解説のパネルにも書いてあったのですが、彼の70年代の油絵を見ていて、「あ、誰かに似ているなぁ」と思ったんですね。
なんとなく観たことあるような画風。 すぐに誰だか分かりますよね? |
後で個人的に調べたら、実はペダーセンは「北欧のシャガール」と呼ばれてたりするそうで、シャガールと同じくステンドグラスや教会のミューラルなども手掛けているんですね。また、更にいろいろ調べたら、ペダーセンはフランクフルトで行なわれていた退廃芸術展でシャガールの作品に出会っていて、それ以来、彼の作品のインスピレーションになっていたそうです。なかなか興味深いですよね。シャガール・ブルーっつって。
まだまだ色んな国の「コブラ作品」が続きます。 |
上の写真では、様々な国のアーティスト作品がずーっと奥まで並んでいるのですが、左の手前にあるのはタジリ・シンキチさんの彫刻です。タジリ・シンキチさんは日系アメリカ人として生まれ、最終的にはオランダ国籍を取得した前衛芸術家なんですね。コブラ自体が国際的なムーブメントだったワケですが、タジリシンキチさんは、その存在が国際的ですw
最後のコーナーには、ヤン・ニューエンハウス(Jan Nieuwenhuijs)によるサイズが小さめの作品(グワッシュ画だったかな?)が並んでいました。画像では見難いですけど、こういう淡目だけどカラフルな色使いもそうですが、ニョロニョロした繊細な線で描かれた動物たちは理屈抜きで好きです。ちなみにコンスタントの弟さんだそうです。
素敵なアレンジメント |
Bank & Raul の「Brutal Vitality」
コブラが国際的で実験的なアーティスト集団であり、創造的自由や実験性、また生命力や社会的関与をバックボーンにして制作に励んでいたということから、コブラ近代美術館では「オープン・コレクション・プラグラム」という、コンテポラリー・アーティストとのコラボレーションを行なっています。
このプログラムでは、美術館側が提供する所蔵作品や資料などをインスピレーションとして、アーティストがコブラ作品と自身の作品とをフュージョンさせながら、コブラの歴史物語や哲学を表現していきます。
デンマークのアート・デュオBank & Raulによる「Brutal Vitaliy」は、5つのセクションに分かれたインスタレーション大作でした。それでは、美術館でいただいたリーフレットの解説を参考にしながら、全てではないですが、セクションごとにみていきましょうかね。
生活がアートに浸透した時… |
まずは、「When Life Penetrated Art」。私は、「生活(人生)がアートに浸透した時」と訳して…というか解釈してみました。アートが生活に浸透すると言う方がしっくりくるのかもしれませんが、生活、あるいは人生が主語になると、こっちからアートに向うというスタンスになるから、それがコブラっぽいなと思ったりしました。
この作品はキッチンがモチーフになっているワケですが、そこにさまざまな別の作品を置くことで生活感を演出しており、日々の生活や家族(家庭)生活、更には生殖能力などを表現しているようです。
右半分は「When Life...」の続き |
お次は「Off the Grid - Hey Beast」(写真の左半分)。様々な模様の生地で覆われたパネルを背景に、奇っ怪でユーモラスなコブラの「生き物」作品が飾られています。リーフレットの解説に、「これらの生き物は破壊の象徴であると同時に、新たに見つけるであろう自由の前兆なのだ」と書いてあり、なかなか深いなと思いましたよ。
その他にもコブラにおける国際的な要素や、色んな意味でのプリミティヴィズムを表現した作品がありましたが、特にコブラ哲学を強く感じた作品が「Shaping the World」でした(下の写真)。
廃墟にも見えるレンガの壁には、戦時中の写真や戦争を描いた作品などに加え、コブラ・アーティストの作品(作品の写真)が飾られ、更にはコンスタンが1948年に掲げた「生活に根付いた(中略)自由で新しい、表現豊かなアート」を呼びかけるマニフェストが貼ってあります。「人類の生命力」が古い考えやしきたりを壊して、新しい価値観や社会を作ってゆく。正に、「Shaping the World」(世界を形成してゆく)ですよね。ふむふむ。
企画展 Constant: Space + Colour
2階で行なわれていた企画展では、現代のオランダ建築に大きな影響を与えたというコンスタント(Constant)の、戦時中やコブラ時代から、未来都市構想プロジェクト「New Babylon」時代直前までの、大きく変化していった作品群が展示されていました。
この部屋でしばらく座っていましたw |
戦時中の白黒作品からコブラ時代のカラフルな作品を経て、今回のハイライトのひとつとされているのが、「A Space in Colour」(1952年)を再現した部屋です。この部屋は、オランダの建築家アルド・ファン・アイクとのコラボレーションなんだそうです。個人的に、こういう部屋ものの作品はどうも居座ってしまう傾向にあり、正に空間と色をじっくり楽しませてもらいましたw
リートフェルトとのコラボなので デ・ステイル調なんですね |
それから、家具のデザイナーで建築家のヘリット・リートフェルト(Gerrit Rietveld:ゴッホ美術館本館の設計者 + Stedelijk Museum に椅子の作品あり)とのコラボレーション、「suggestion for the home」の再現もなかなか興味深かったです。写真では見切れてしまったのですが、左手には黄色い子供部屋(2人用)があって可愛かったですよ。家具の配置とか、タイト且つ合理的にできていて、「うわー。こういう部屋に住みてぇ!」と思いました。
その他にもファブリック・デザインのシリーズ作品や、宇宙旅行をモチーフにした作品、そこから「New Babylon」へと繋がっていく作品や、「New Babylon」のための最初のスケッチなどが展示されていました。
コンスタントは建築が絡んでいるだけあって、他のコブラ・アーティストの作風とは少し異なったりしますが、ペインティング作品はもちろんのこと、戦後復興や新しい住居への取り組みの中にも、やはりコブラ・スピリットを垣間見ることができたと思うし、オランダの独特な建築デザインはこういうところから始まっている部分もあるんだなと思ったりもしました。
この日の夕飯w
ホテルに戻ったのが夕方ちょい前くらい。初日なのもあったし、地理的、そしてコブラ・ミュージアムの内容的にも、この日は1つの美術館をじっくり時間を掛けて楽しもうと思いましてね。
夜になって奥さんが仕事から戻り、ベトナム料理のレストランへ行きましたよ。
奥さんはビーフ・フォー 私はビーフ・カレー |
ベトナムのカレーって優しい味なんですねw
まとめ
思っていた通り、というか思っていた以上に、コブラ・ミュージアムは本当に良い刺激になりました。
コブラって、私が持っているどんなに重たくて分厚い美術本にも少ししか触れられていないんですよね。なので、この美術館でこれだけ数多くのコブラ作品を目の前でみることが出来たことは、私の人生の中でも大きな出来事のひとつになったと思っています。
実際にみた作品、特に絵画作品は、ブラシ・ストロークから感じられるパッション、描かれている線や形の自由な感じ、それから、デフォルメされまくった「生き物たち」の表情や動きなどなど、全ての要素が見ていて本当に気持ち良かったです。
世の中一般的には、お手本通りのものだけが上手いとされたり、型にはまったものだけが良しとされたり、こうであるべきみたいなことが多かったりします。最近の私はそういったことを改めて強く感じてしまっていて、いろいろと行き詰まったところがあったのですが、コブラ・ミュージアムに来たことで少し解放された気分にもなりました。
コブラのことは今後もいろいろと調べて、作品は勿論、その哲学やスピリットから、自分に必要な刺激を受けていきたいと心底思いましたよ。
そんなワケで今回はこの辺で。
次回は、映画博物館のEYE Film Instituteと写真美術館のFoamへ行った日のお話しになりますよ。
それでは
See You !!
旅の続きはコチラから↓
アムステルダム旅行記 2 Day3:映画博物館 EYE Film Institute + 写真美術館 Foam
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*私ヒの字は音楽制作や翻訳(音楽関係)のお仕事をしています。
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